Teppei Kamitani / 登山家(東京・日本)

tumblr_nhd0xcyNr01u01eppo3_500

photos ©Teppei Kamitani
ぼくはカナダにいたころ、ナナイモという町のシェアハウスにしばらく住んでいた。

そこに新規の住民としてやってきたのがこの男だった。彼はとんでもないデカさのバックパックを担いで現れた。

山登りをするのだという彼は、カナディアンロッキーの頂上まで登りに行くらしい。
当時ぼくはその凄さが全くわかっていなかった。
ただ荷物の多さに驚いた。担いでみたが、ぼくではこの状態では普通の道を10分も歩けない。これに加えて4リットル入りの水を手持ちしていて、

「そんなのも持っていかなきゃいけないの?」なんて言った記憶がある。

出発前夜、ぼくらは金がなかったので安い飯を買い、家の裏庭で飲んだ。

 

「しばらく帰ってこなかったら、死んだと思ってください」

テッちゃんは笑いながら出て行った。

そして

しばらくぶりに彼は一つ事をやり遂げた表情をして帰って来た。本当に登攀(とうはん)したのだ。

ぼくらは泣いてしまった。

「どうだった?どんな感じだった?」
ぼくのこの月並みな問に彼は、言葉を迷った。詰まりながらこういった。

「なんて言ったらいいんでしょうかね…。何か多分何らかの表現はできるんだとは思うんすけど…。でもそれを言葉にすると、今自分が感じているこの感触が、真実とズレてしまいそうな気がするんですよ」

 

ぼくは彼の言葉を、完璧な返答だと思った。
バンクーバーから帰国してから彼は次の山に向かう準備をしている。

山に登らない人ならなおさらだが、多くの人はこう思うだろう。
「山登りはいいけど、将来的にはどうするの?なんで大金をかけてわざわざ山に登るの?」
「死ぬ可能性も高い山に、そこまでしてなぜ?」

 

その答えは、登る人にしか理解し得ないものだとは思うが、

彼の写真を見て、ぼくは「ああ」と思ってしまう。

彼のブログはこちらから