#10 古いもの

今日は元旦だ。

 

古い喫茶店に来ている。結構古い。
ぼくの生まれるずいぶん前からあるんだろなとか思いながら、一杯八百円のブレンド珈琲をすする。
まあ喫茶店の珈琲は安くない。

 

ぼくの目の前の奥のテーブル席には、東京の下町で生まれ、生きてきたであろう、爺さん婆さんたち六名が集まって話をしている。

 

店自体もなかなか年季が入っている。ニスを塗られたテーブルの塗装が剥がれてて、窓ガラスにはステンドグラス。

iPhoneの電波時計と何分かズレた古時計が、三十分おきに「キンコーン」と鳴ってる。

 

 

そういえば去年は、
古いものを守ったり、ひとつのものを長く続けている文化に触れる機会が多かったな、と思う。
あれ、こういう振り返りって年末にやるんだよな普通。まあいいか。

 

これまであんまり意識してなかったけど。たとえば、
お寺とか、仏像とか。京都の町とか。特定の芸術とかには、守られてきたルールがある。
実は、数年前まで、たぶんぼくはそういうのに抵抗があった。
そういうのってのは、保守的な考え方とか、昔からの慣習とか。
変化を嫌う、頑固な古い考え方のような気がしてて、なんとなーく、なんかやだなって思ってたんだけど、

 

そういうルールに何十年も何百年も従って続けてきた結果として、
現代にこういう形で残ってあるわけなのだ。建築物とか、壁画とか、仏間とかに。

 

その中に「これは守りたい、守らないといけない」っていうたくさんの人の思いを見た。

 

流行は生まれては、文字通り流れて消えてってる。
都会になればなるほど新しいもので溢れてて、すげーピカピカなもので埋め尽くされている。
だけどそれだけじゃなくて、古いものや文化、見方みたいなそういうのを保ってる人たちもやっぱいて、そういう価値観も、なんかカッコいいなあって最近は感じるのだ。
なんならそっちのほうが大変な場合も少なくはなかろう。

 

 

いろいろな「在るもの」がどのくらい守られて残ってて、どのくらい新品でつくられ、生まれているのか。
よく考えたことはなかった。

 

これもこの街で新しく知ることができた世界なのかもな。
爺さんたちが店を出たあと、ぼくも珈琲カップを空にして店を出た。

 

 

 

でもさ、珈琲八百円はやっぱ高いよ。

ito

©  FLOPS & LINES All Rights Reserved.
PAGE TOP