百四十六通りの方法

「満員電車の中みたいな話だよ」

IさんはぼくのiPhoneの向こう側で、電子タバコを吸いながら言う。

「満員電車ですか」

「そう、通勤の満員電車って嫌でしょ。今は乗ってないかもしれないけど。フクダくんならどうする?サラリーマンしてるとして。どうにかしたいと思っている。」

「うーん…」

ぼくは仕事の昼休みだった。近所で味も覚えていない安いうどんをサッサと食い、
外に出て十以上も年上の先輩と電話している。

ぼーっと新宿の狭い空を見上げながら、ギチギチに押し入る列車の入り口を思い出して、鳥肌が立つ。

「たぶん色々あると思うんだ。『三十分くらいだからスマホいじってやり過ごせばいいし』って言う人もいるだろうし『満員を避けるために、一時間早く起きればいい』って言う人もいると思う」

「そうですね、それかただ耐え続けるのか…」

「でもそれって電車の中だけの話なんだよね。
俺は嫌だったからそうじゃなくて、車か自転車を買って、それで行こうと思ったんだ。
ある時から、そういう生き方に変えた。

でもやっぱさっき言ったみたいな電車を乗り過ごす方法を選ぶ人の方が、絶対数は多いんだよね。

車持つにもお金がかかるとか、自転車毎日こぐのはキツイとかね。
色々こっちはこっちで大変なこともあるから。
自転車を選べば、完全に百パーセント楽になるとか、そういう話じゃない。

だから普通はね、簡単に話はまとまんない。 よく割れるもんなんだよね。」

彼は笑った。

 

ぼくは満員電車の外の世界は発想がなかった。でも方法は他にもあるのだ。

最近見てる海外ドラマでも言ってた。

「やり方は他に百四十六通りある。わからなければ辞めろ。」