ESSAY

今月で一歳になる息子は、お腹が空いた時に泣き、眠い時に泣き、

オムツを替えてほしい時にも泣く。

 

ご飯を食べる時は、次の一口が待ちきれないようで、

こちらがスプーンを口に運ぶのが間に合わなくなる。

 

だいたい朝の九時くらいは機嫌が良く、

本棚の本を出しては表紙を外し、床に放り投げることを繰り返す。

 

掃除機が一番好きだ。

収納から出してきた瞬間に目を輝かせて近寄ってくる。

ゴーッという音を立てながら出てくる排気を、顔全体で浴びながら掃除機のお尻を追いかける。

 

途中で倒れてしまい、頭をぶつけて、しかめっ面で泣き出すのだが、

ママが名前を呼べばムクッと起き上がり、 また笑顔になって、猛スピードのハイハイでママへ向かう。

 

その途中でお気に入りのテレビのリモコンを見つけると、それを手にして嬉しそうに舐めまわし、

でも、やっぱり掃除機が近くを通ると、結局は掃除機を追い回す。

 

この一連の動作を見ていると、なんてまっすぐで、正直で、本能で生きているんだろう

と感心せずにはいられない。

 

一つ前の行動を忘れ、今興味があることだけを選ぶ。

 

それに比べて僕は、興味があることを先送りにし、効率的に物事を進めるように考えている。

 

赤ん坊はそんな行動はしない。 動物もそうだ。

動物は本能で生きている。人間には理性が加わる。

これは人間と動物の決定的な違いだと思うが、人間の中でも幼い赤ん坊は、動物と同じく本能で生きている。

 

いつか僕の息子も僕のように、理性で考え、興味の対象に序列をつけ、行動するようになるだろう。

歳をとるごとに、できることが増え、人間らしくなっていく。

その中で落としていく感性があると思う。

良いのか悪いのかはわからない。

 

理性で動くということは、本能を削ぐことなのかな、 と思う。

 

 

 

林 徳郎

DSN_1652